6時にモーニングコールのベルが鳴った。
7時にツアー係員がバスで迎えにくる。それまでに朝食を済ませてチェックアウトせねばならない。
うさぎたちはコーンフレークやスナックの残りものを胃に放り込んで朝食に代えた。
チェックアウトには思いのほか時間がかかった。なんと、システムがダウンしているので、清算は手で行うという。
まったくよく機械が壊れる国である。
飛行機の座席のコントローラは効かないわ、イスタナのカードリーダーは壊れるわ、プリクラの画面は静止しないわ、
今度はホテルの清算システムのダウンかいな‥。
「精算書がお渡しできませんが、それでもよろしいですか?」とフロントのお姉さん。
ちっともよろしくないが、"ノー"と言ったところでシステムが復旧するわけでもあるまい。
うさぎたちは不本意ながら"イエス"と答えた。
お姉さんは電卓を取り出し、レストラン等から上がってきた控えを元に計算を始め、
「この金額になりましたが?」と言って電卓の液晶を示した。
本来ならば、とてもじゃないがこんな手計算を信用する気にはなれない。
けれど幸い、昨夜のうちにうさぎはルームチャージのトータルを自分で計算しておいた。
きりんは、お姉さんの計算とうさぎの計算が合致しているのを確かめると、安心してその金額を支払った。
清算と同時に、うさぎは"リーフ"を2枚ばかり購入した。
"リーフ"というのは葉っぱの形をしたメッセージカードである。
価格は一枚1RMで、その売上からカードの原価を引いた残りが、緑化団体への募金となる。
ロビーの片隅には丸坊主の木が置いてあり、その枝にはメッセージの書かれたリーフがたくさんぶら下がっていた。
うさぎは2枚買ったリーフのうち1枚は自分のバッグにしまい、1枚はネネにメッセージを書かせて枝に下げさせた。
リーフには国籍を書く欄があったが、一番多かったのはさすがにマレーシアで、イギリス、オーストラリア、
合衆国といった英語圏の国々、そのあとに日本が続いていた。
英語圏の国が多いのは、ここが旧英国領で英語圏からの客が多いせいか、それとも英語圏の国々が環境保護に熱心だからか、
はたまた、英語が読める人だけがこの募金の存在に気づくからだろうか。
何にしても、うさぎたちが見た観光客の出身国別構成比とは異なるのが面白いと思った。
出身国に「サウジアラビア」と記入されたリーフは一枚も見当たらず、ドイツやフランスも皆無であった。
リーフを枝に掛け、売店へ最後の物色に行ってまたロビーに戻ってくると、フロント係の話し声が聞こえた。 どうやらシステムが復旧したらしい。なーんだ、チェックアウトをほんの数分待てばよかったのだ。