今度の座席は真ん中の4座席だった。行き同様の最新型機を期待していたのだが、今回は普通のジャンボ。 今度こそゲームをやるぞ〜、と思っていたのに、がっかり。
席に落ちつくと、すぐに温かいペーパータオルのおしぼりが、トングでつまんで配られた。 エアコンの効きすぎで寒いので、そのおしぼりの温かさがなんとも嬉しかった。 5日前、成田を発つ時には冷たいおしぼりが配られ、そのひんやり感が嬉しかったことを思い出した。 臨機応変のサービスが心憎い。
うさぎの席から通路をはさんで向かいの窓側の座席には、20人ほどのインド人の団体が座っていた。
サリー姿の女性もいるが中年の男性が多い。マレーシアに住むインド系の人々であろうか。
機内食を食べ終わると、彼らは通路にたまって大きな声で談笑しはじめた。
随分といいお行儀もあったものだが、まだ忙しく立ち働いているスチュワーデスたちは黙ってその脇をすり抜けていた。
彼らは〔海外に行くのが楽しくてしょうがない〕といったはしゃぎようで、まるで子供のようだった。
あるとき、その談笑の輪の中に座っていた男性がクルー呼び出しボタンを押すと、
スチュワーデスが機内食のトレーを抱えてやって来て、いい歳をした男に、
「分かっているわよ、お腹が空いたんでしょう?」と、まるで子供をあやすような調子で言った。
飛行機が成田に近づき、高度を落とし始めると、インド人のおのぼりさんたちは神妙な顔つきになってきた。
どうやら耳が痛いらしい。
代わる代わる誰かがクルーの呼び出しボタンを押してスチュワーデスを呼びつけては、
「耳が痛いのを何とかしてくれ」と訴える。
そして、スチュワーデスはその度にやってきては、いやな顔一つせず、
「唾を呑み込んでみて」と、これまた子供をあやすような調子でなだめるのだった。