今日は日本からインターネットで予約しておいた
マングローブリバークルーズへ行ってきました。
集合は10時。ホテルから船着場まで、車で30分程かかりました。
船着場では他のグループもいて、しばらく待たされました。
ふと見ると、アイスクリームの入ったケースがあるではありませんか。
「アイス食べる?」
「うん、いいの?」
「どれにする?」
「じゃあ、これにしようかな?」
「どれ?」
「この、みどりのやつ」
「あっ、それ美味しそうだよね。パパもそれいいなって思ってたんだ」
「じゃあ、これにしよ」
アイスを食べながらチャアは水筒を持って来なかったのを気にしている。
「お水無くて大丈夫?」
「ミネラルウォータ売ってるかな?」
「きっと売ってるよ」
「じゃ、聞いてみようか?」
「ドゥ ユウ ハブ ミネラルウォータ」
「イエス 1RM エンド 50センツ」
「2プリーズ」
「3RM」
「これで安心だね」
しばらくして同乗の3組のペアと共にボートに乗り込みました。
「揺れに弱い人は、こっそり後ろに乗ってください」
「じゃ、後ろに行こうか」
チャアは酔い止めを飲んできたけど、念のため一番後ろに乗ることにしました。
ボートは波止場を離れるとものすごい勢いで走り始めました。
なんだかチャアは眠そう。
「眠いの?」
「うん、酔い止めが効きすぎたみたい」
「じゃあ、ちょっと寝たら」
「うん、なんかあったら起こしてね」
「はいよ」
チャアはしばらくパパの膝の上でお休み。
ボートは外洋をしばらく走るとマングローブの川(川とはいっても塩水)へと入っていった。
「マングローブという木の種類はありません。
マングローブというのは塩水で育つ木の総称です」
ここでボートを止めてマングローブについて色々と説明してくれました。
チャアはちょっと寝たのですっきりした顔でその説明を熱心に聞いています。
「これ、なんだか分かりますか?」
ガイドが何やら丸いものから細く長い棒が突き出たものを見せています。
「誰か答えてくれませんか?」
ガイドが遠いので、あまり良く聞こえないのですが誰かが答えたようです。
「そうです。種です」
「種はこの丸い部分だけで、下についているのは根っこです」
「この根っこを取ると、既に芽が出ています。面白いでしょ?」
「ちょっと廻してみてください」
種と根っこを取ったものが廻ってくると、本当に不思議。
種がサックの様になっていて根っこについて芽をすっぽり覆っている。
「根っこがえんぴつの様に尖っていますがなぜだか分かりますか?」
「そうです、マングローブの土壌は柔らかいので落ちた時に突き刺さるんですね」
・・・・・・・・
「ちょっとかわいそうですが、根っこを折ってみます」
ガイドさんが根っこをボキボキと小さく折って皆に1つづつ渡している。
「折った根っこの切り口のところ、ふさふさになっているの分かりますか?」
「これで海水を濾過して、水を吸い上げるんですよ」
「じゃ、濾過した塩分はどうなるんですか?」
「ナングローブの葉っぱをよく見てください。
ところどころに黄色い葉っぱがあるのが分かりますか?」
「塩分はあそこに全て集められるんです。
そして葉っぱを落としてしまうので、うまくできてますよね」
確かにうまく出来ている。自然というのは人が考えるよりとても理に適っているようだ。
「もちろん、マングローブは塩水でなくても育ちます」
「でも、一度真水で育っちゃうと、この機能が退化してしまいます。
1代で機能しなくなってしまいます」
「ですから、日本で売っている様な木は塩水では育だちません」
実際に自然に触れながら聞く話はとても面白い。
そう役に立つ話でもないが、頭では無く体で覚えてしまう。
もっといろいろ知りたくもなってくるし、
こういうところから研究者とかも出てくるんだろうな。
マングローブをしばらく進むとボートは止まった。
「この景色、きれいでしょ」
「ここは、映画”アンナと王様”のロケで使われたところですよ」
「私は何度も見ましたが、後ろから40分くらい巻戻したところです。
ぜひ見てくださいね」
その映画は見た事ある。確かにこんな景色があった様な記憶があります。
そういう場所に立っているってというのは不思議な気分ですね。
映画はもう一度見てみようかな。
曲がりくねった川をゆっくりと進みながら、
マングローブはいろいろな景色を見せてくれた。
ボートは、突然広まった湖の様な所に出てきた。
エンジンを止めるとボートは静かに浮かんでいる。
「空になんかいるよ」
「ほんとだ、鷲(ワシ)かな?」
空高く豆粒の様に数匹の鳥が飛んでいる。
「あれは、白頭鳶(トンビ)です。これから餌をあげるので見ていて下さいね」
船頭さんが餌を川に撒くと、エンジンを入れ拡散していく。
「なんか、鳥が集まってくるよ」
「すごい数だね」
さっきまで、数匹だと思っていた鳥はいつのまにか何十匹となり
餌を求めて低空を飛行している。
その鳥達は餌を見つけると一直線に下降し、餌を足で掴んで上昇する。
なかなかうまいものだ。
それにしてもすさまじい。
こんなにたくさんの鳶に襲われたら、こんな小さなボートはひとたまりもない。
こういう自然の中に来ると人間は本当に弱い動物なんだと痛感する。
知恵がなければとても生きていけない。
餌がなくなると鳶達はいつのまにか去っていった。
鳶の目はとてもいいそうで、かなり高いところからでも餌を見つけて降りてくるそうです。
そして、餌がなくなればもうここには用がないのでさっさと自分の居場所へ帰っていくんですね。
ガイドさんが対岸に何か見つけたようです。
「ちょっと向こう岸に行きますね。おおとかげがいますよ」
そっと、岸の側にボートを寄せると、指差す方に何かいます。
木の影に隠れてあまり良く見えませんが確かに大きなトカゲです。
全長1Mくらいでしょうか。
急いでビデオを向けたけどやっこさん、のこのこと隠れて行ってしまいました。
「こっちにはシオマネキがいますよ」
「どこどこ」
「どこだろ?」
「あそこの青いのです。そっちには赤いのもいますね」
「なんか青いのがいるけど?」
ビデオを向けて拡大してみると確かにカニです。
ちっちゃいカニでとっても派手で奇麗な色をしています。
「このカニとっても目立ちますよね。
皆さんさっきの鳶とかの餌になっちゃうんじゃないかって心配じゃありませんか?」
「でも、大丈夫なんですよ」
「自然の中では、こういった派手な色は毒があると思われていますから襲われずに済むんです」
「シオマネキのハサミは左右の大きさが違うの知ってますよね。どうしてだか分かりますか?」
「あれは、子供の時に片方を自分で切り落としてしまうんです。
すると切らなかった方に栄養がいって大きくなるんですよ」
「切った方も後で生えてくるんですが、こっちの小さいハサミを使ってものを上手に食べます」
「大きいハサミは何の為だか分かりますか?
雄にとっては大きい方がカッコいいんですね」
「この大きなハサミで雌を招いているんですよ。
潮を招いているみたいなのでシオマネキって名前がついていますが、
実は雌を招いていたんですね」
「もちろん雌は左右のハサミが同じ大きさです。
片方が大きいのは雄だけです」
「メスまねきなんだ」
チャアがやたら感心している。
きりんにもなぜかこの話は印象に残った。