サイフをなくてガッカリはしましたが、友達が一緒だったので、困りはしませんでした。 タクシーは無事「ブルジュ(塔)」に着いたし、エアコンの効いたその快適環境で、お望みどおり、ジュースも飲めました。
そのジュースというのは、 カルカデ(ハイビスカスティー)・マンゴージュース・オレンジジュース・グアバジュースが4層に重なったきれいなモクテル。 その名も「ブルジュ」(笑)。 お値段は米ドルで7ドル半だったような。つまり700円くらい。 まあ、味は、市場で飲む1スーダンドル(40円)のジュースのほうが美味しかったですけど。 まあ、話のタネです。
ちなみにこの「ブルジュ」というのは、ホテルです。 最近建ったばかりの、スーダンきっての高級ホテル。
見る角度によってはご覧のとおり卵型に見えるので、「バイダ(卵)」と呼ばれています。 リビアの経済援助で建てられたので、「ガダフィの卵」なんて呼ぶ人もいるらしい。
わたしたちがこのホテルにやってきたのは、ジュースを飲むためだけじゃあありません。 米ドルをスーダンドルに両替したかった(なんと空港よりレートがよかった!)のと、 最終日1晩だけここに泊まろうと思って、 その下見と予約にやってきたのです。
でもねえ、上階からナイルを一度見下ろしたら、二人とも、それで気が済んじゃった。
確かに、ハルツームでナイルが上から見下ろせるのはここだけだし、 全てがゴージャスでサービスにもソツがなく、いいホテルだとは思うけれど、 「わたしたちが日本に持って帰りたいスーダンの思い出って、こういうのじゃないよね」ってことで完全に意見が一致してしまった。
ナイル川は広大すぎて、上から見下ろしたところで、全貌が見えるわけじゃない。
それに、見下ろす必要もない。この街の人たちは何十年暮らしていたって、ナイルを上から見下ろすことはない。 だからわたしたちにとっても、ナイル川の思い出は、夜にピクニックした黒く光る水辺や、浄化されて水道の蛇口から出てくる安全な水ということだけで、充分なのです。
わたしたちにとってスーダンとは、わたしたちが無事に家まで帰り着けるのか心配してくれるママの存在であり、 そういう温かいママと最後まで一緒にいるのが、わたしたちのスーダン旅行だよね、と、二人とも同時に思った。
そして、この瞬間、ああ、やっぱり旅は道連れだなあ、とわたしは感じたのであります。 つい前日まで「せっかくスーダンに来たんだもん、『あのブルジュ』に泊まったっていう話のタネは外せないでしょ♪」 なんて二人して盛り上がっていたのに、憑き物が落ちたみたいに、二人して同じタイミングでストンと落ち着いてしまった。 ちょっと感動的でした。