飛行機から降りると間もなく、免税店の並ぶ賑やかな大広間に出た。 この空港は、出発ロビーと到着ロビーが分かれていないらしい。
一体どっちへ行くのかと迷いつつ、また免税店の品物につい目を奪われて寄り道しつつも、 なんとなく人の波についていくと、階下にイミグレがあった。 左側の壁には様々な言語で「歓迎」と書かれた垂れ幕が下がっている。
子どもたちを右脇のソファに座らせ、長蛇の列の最後に並び、ようやくイミグレ通過。 カウンターにキャンディが置いてあったので、それをもらってきた。 お役所お役所していない、もの柔らかな感じがいい。 シンガポールっていうとなんとなく、杓子定規な国を想像していたのだけれど。
イミグレを通り抜けると、そこにはまた店・店・店‥。 まるでショッピングセンターに迷いこんだみたい。
空港の外に出ると、ジュディさんという華人の女性係員さんが迎えにきてくれていた。 うさぎたちのためにだけ迎えに来てくれた係員さん。マイクロバスもうさぎたちの専用車だ。
現在日本時間で夜中の0時前。一時間遅れのシンガポール時間でも11時。
マイクロバスは深夜の道をセントーサ島へとひた走った。
渋滞することもなく、快調にバスは走り、
しばらくすると右手に黒々と水をたたえた川が沿いはじめた。その向こうには摩天楼。
川沿いにひときわ明るく輝く建物があり、
そのおびただしい数のライトが水面に映ってゆらめいていた。
「あれは何?」とジュディさんに尋ねてから、すぐに自分で思い出した。
「ああ、そうだ。あれは知ってる。昨年できたばかりの高級ホテル、フラトンでしょ?」
「そうそう、フラトンね」と、日本語の達者なジュディさん。
そうだ、忘れないうちに言っておかなくちゃ。
「帰りの飛行機のチャイルドミールのリクエストを上げ忘れたので、
リコンファームの時にリクエストを上げておいてください」と。
万が一日本語が通じてないと困ると思って、英語で繰り返し、念を押した。
「ああ、チャイルドミールね」と、ジュディさんはメモを探しながら言った。
うまいこと航空会社にこのリクエストが伝わりますように。
フラトンを通り過ぎると間もなく、あたりの様相は変わってきた。 大きなクレーンが数え切れないほどたくさん首をもたげ、作業場といった感じ。 海を埋め立てて土地の造成でもやっているんだろうか? 小国シンガポールは、海を埋め立てて年々領土拡大を図っているのだと 何かで読んだ記憶がある。
セントーサ島への入り口はその作業場を突っ切った先にあって、 途中からその道はエレガントな橋に変わった。 いや、「エレガントな」というより、「テーマパーク調の」といった方が近いかな。 ディズニーランド風っていうか。
煌々と灯りがついた橋を渡りきりセントーサ島に入ると、あたりは急に闇に沈んだ。 緑が濃く生い茂るうねうね道を、車は走っていく。対向車もなく、静かな雰囲気だ。