日替わりアクティビティの予定が、3階の掲示板に書かれていた。 今日は2時からロッククライミングがあるそうなので、 プールから少し離れたビーチに建っているシー・スポーツセンターに向かった。 名前は立派だけど、要するに用具小屋。 マリンスポーツ用品やら自転車の貸し出し場所らしい。
日替わりアクティビティとしてかかれていたから、無料かと思ったら有料だった。 あらら世知辛いこと。でもいいや、リゾートで700円ぽっちをケチったってしょうがない。
それにしても、一体どこを登るんだろう?
あたりを見回してみても、それらしい場所はない。
"ウォールクライミング"ではなく、
"ロッククライミング"というネーミングにも一抹の不安を感じる。
まさか海に突き出ているあの崖なんてことはっ?!
「この子が登るんだけど、一体どこを登るの?
まずは登るところを見てから挑戦させるかどうか決めるわ」と告げると、
"K7"というニックネームの若いインド系スタッフが、ホテルの裏手へと案内してくれた。
ホテルの裏手は、いかにも"裏"で、雑然としていた。 外で使う雑多な道具やら、しおれかけた鉢植えがたくさん置いてある。 ゲストの目につかないここはどうやらよろず作業場で、 バルコニー用の鉢植えの生産場所および退避場所であるらしい。 おびただしい数の鉢植えの向こうには海が回りこんでいた。 "隠れ家的な雰囲気"という言い方もできなくはないが、 "ひなびた"という表現の方がより忠実な入り江が。
こんなところに目指すものがあるのかと一瞬不安になったが、 ホテルの壁にウォールクライミング用の壁が貼り付けてあるのに気がついた。 つまり、ここのホテルで言う"ロッククライミング"というのは、 ホテルの壁をよじのぼることらしい。
ウォールクライミング用の壁からは、あちらこちらに手や足を掛けるものの突き出ている。
こういう壁ならセブでも皆で登った。
ただ、問題は高さ。てっぺんはホテルの3階分の高さ。
目測でおよそ10メートル。セブの壁の倍くらい高いんですけど‥。
「なんか随分高いけど、挑戦してみる?」とチャアに尋ねると、 「やる」というので、K7にそう告げると、彼は早速準備にとりかかった。 倉庫からウォールクライミング用の道具一式を出し、ロープを壁に取り付ける。
壁の準備が整うと、チャアの頭にはヘルメットがかぶせられ、
胴まわりと太ももにベルトが取り付けられた。
サンドレスの上にベルトをつけると妙な格好。
「ヘンな格好!」と言いたいのをこらえ、「さあ、頑張っておいで」と、カメラを構える。
「壁から体が離れないように。壁の右の方が簡単だから、その辺を登って」 というK7の指示を受け、さあ、チャアは果敢に登り始めた。 手足を掛ける凸部分が少ないので、ちょっととまどっている様子。 でも、ゆっくりながら、確実に登ってゆく。
中ほどまで登ったあたりには、真ん中に大きくまるく突き出ている部分があり、 この部分は登れないのではと思ってみていたが、やっぱり難しいらしい。 そこは何とかクリアしたものの、てっぺん近くの同じようなところは、 なかなか手が新しい岩にかからないうちに、手足が壁から離れ、命綱に体をあずけて、 ブラ〜ンとぶらさがってしまった。
それでもなんとか持ち直し、壁の一番上の縁をタッチしできた。
降りるのはお得意、ばねのよく利いた足で壁を蹴りながら、勢いよく弾んで降りてきた。
チャアが降りてくると、思いがけずネネが、自分も挑戦すると言い出した。 チャアの方は「もうやらない」。 元気印のチャアが一度だけとは、よほど大変だったとみえる。
で、ネネの番。ベルトが足に食い込むと痛そうなので、 腰に巻きつけたパレオの上からベルトをしたネネは、チャアにも増して、ミョ〜な格好。 登りはじめると、ますますミョ〜な格好になった。 壁に体をつけるということは、足を横に開くということ。まるで足長毛ガニみたい。
チャアが登るのをさっきじっくり観察していたネネは さすがにチャアよりもだいぶラクに上まで登ってしまった。 第一、身長が違うから、岩の選択肢も広いし、相対的に壁が低く見える。
チャアよりもだいぶおとなしく降りてきたネネも、 やっぱり二度目をやりたいとは言わなかった。 セブのは楽しいアトラクションであった壁登りも、 ここのはハードなトレーニングだったのかもしれない。