夕方までプールで遊んだあと、2時間ばかり昼寝をし、
セントーサ島の夜の呼び物である噴水ショー・ミュージックフォンテーンへと向かった。
会場まではバスも走っているし、歩いたって行かれないことはないとも思ったけれど、
今日はモノレールに乗っていくことにした。
モノレールの駅はホテルのすぐそば。歩いて1〜2分の距離である。 そして、ミュージックフォンテーンのショーが行われるのはお隣りのフェリーターミナル駅。 だったら近い――と思いきや、このモノレールは一方通行なので、 セントーサ島をほぼ一周しないと、その隣り駅へは行かれないのであった。
まあいいや、まだ時間はあるし――というわけで、駅のホームに上がり、次の列車を待った。
モノレール駅はこじんまりとしており、そのプラットホームには、
よく遊園地でみかける整列用のパーティションが張り巡らされていた。
電車を待っている人は少なかったので、そのパーティションの迷路をグルグルと歩き、
短い列の最後尾についた。
ほんの数分すると、色とりどりの豆電球をチカチカさせたモノレールが入ってきた。
列の最初の方から順に乗り込んでいくのを待っていると、後ろからインド人の若い女の子が、
「ハイごめんなさいよ、ハイごめんなさいよ、ハイごめんなさいよ」ってな感じで
"エクスキューズミー"を連発しながら、
うさぎたち、そしてその前に並んでいた人たちを追い抜いていった。
その仲間の女の子たちも「オイオイ」と呆れつつ、その子について前へ前へ。
金糸銀糸の入った色とりどりのサリーを身にまとった5〜6人の華やかな集団は、
キャアキャア言いながら、ズル込み戦法でモノレールに乗り込んだ。
人を押しのけてまで乗らないと、乗れなくなっちゃうのかしら?
うさぎはちょっと不安になったが、幸いモノレールはこの駅でたくさんお客を吐き出し、 ホームで待っていた人たちは全員難なく座席に収まった。
モノレールはまるでオモチャのようだった。 4〜6人用のボックスが10数個ほど連なっているもので、立ちのりは禁止。 そりゃそうだろう。 車両の幅はほんの一メートルくらいしかないし、 窓は素通しで腰のあたりから大きく開いている。 高所恐怖症のうさぎなんか、座ってたってなんだか怖い。 高いところにある狭い線路の上を綱渡りのように走っているのかと思うと‥。 うさぎは、さっきバイクツアーのときに見た線路がすごく華奢だったことを思い出した。
けれど、モノレールは遊園地の乗り物みたいで楽しかった。 車体に触れ合わんばかりのすぐそばまで木々が迫っているし、 遠くにマーライオンタワーや海が見える。 さっき自転車で走った道と重なったり離れたりして、 セントーサ島の地理に詳しくなれると思いきや、 頭が混乱してますます訳が分からなくなった。
しばらくすると、乗車したときにはまだほの明るかった外が、完全に夕闇に沈んだ。 色とりどりの電飾に縁取られた我らがモノレールは、 チカチカと脳天気な光をちらつかせながら、闇の中を突き進んだ。
7つある駅の一つ一つに近づくたび、皆はおしゃべりをやめてちょっと黙った。 なぜって、放送が入るからだ。英語と中国語と日本語で。 その日本語の放送を聞くのがちょっとしたお楽しみだった。 日本語の放送といっても、英語の駅名を「○○ステーション」とカタカナ英語で読むだけ。 あまり意味のある気を遣い方とは思えないのが、妙にウケたのだった。