さて、フェリーターミナル駅に到着した。 最終8時半の噴水ショー・ミュージックフォンテーンまで、あと5分もない! 皆は、行くべき方向を見定めると、 電飾で美しくライトアップされた噴水の庭園を走りぬけ、会場へと急いだ。 どちらの方向へ行けばいいのかは知らなかったけれど、 とにかく周りの人が皆一斉に歩いていく方角へと、向かったのだ。
ほんの3分ほどで、会場に到着。 黒々と水の光る舞台の前にコロッセウム状の座席が扇形に広がっていた。 もうすぐ始まるというのに人はそれほどおらず、 写真をとっているうちに皆より遅れてしまったうさぎも、 すぐに他の3人がいる席を見つけることができた。
ショーはとてもきれいだった。 「たかが噴水」と思って大して期待してはいなかったのだけれど。 水が音楽にあわせて、闇をバックに、色を変えながら踊る。 まるで生きているみたいに、ふんにゃりふんにゃり動くのだ。 動きのパターンはそういくつもあるものではなくて、同じことの繰り返しなのだけれど、 色がきれいなので見惚れてしまい、飽きることがなかった。
しばらく水と光のダンスを見たあと、物語が始まった。 水で大きなスクリーンを張り、そこに映像が映し出された。
最初に出てきたのは、いかにも底意地の悪そうなジイさんで、
英語のセリフが分からない子どもたちでも、これが悪者だということがすぐに分かった。
ところが、次に出てきたのは、顔を真っ赤に塗りたくったお姉さん。
それまで小声で「あの人、悪者なんだよね」などと話していたチャアが黙り込んでしまった。
効果音や背景のイメージはなんとなく善玉っぽいけれど、
顔がどうみても善玉には見えない。
「どうやらあの人、いい者みたい。分かってる?」と聞くと、案の定
「そうなんだー、でもなんか顔が怖いよねー」と子どもたち。
赤い顔のお姉さんの次は青い顔のお姉さん、緑の顔のお姉さんが登場し、 あとから登場した二人のお姉さんのメイクがちっとはマシだったのか、 それともこっちの目が慣れてきたのか、なんとなく善玉に見えてきた。 どうやらこの3人は、先のイジワルジジイからセントーサ島を守るという役どころらしい。
話が進むと、3人のお姉さんは悪玉と戦い始めた。 女の姿をした聖霊が目に怒りの炎を宿し、悪玉にシュワッチ!と勇んで向かってゆく様は、 日本人の我らから見ると、なんとなくみょうちきりんで笑ってしまった。
ショーが終わると、今となっては闇に包まれた舞台へ行き、噴水の仕掛けを覗いた。 でも、そこには変わったものは何もなく、 ただ黒々とした水面が、何事もなかったかのように静まり返っているばかり。 さっきまでの華やかなショーの名残はもうどこにもなかった。