土曜の朝。
少し寝坊して8時半ごろ3階の朝食レストランに下りていくと、レストランは満席だった。
インド系の女性スタッフが店の前に立っていて、
「只今満席ですので、ロビー階へどうぞ」と言った。
それでもう一度エレベータに乗り、ロビー階の5階まで戻ると、
ロビーの脇の廊下の奥の大広間がレストランになっていた。
入り口で部屋番号と名前を告げて入場し、空いている丸テーブルに席を確保した。
ここはとても広く、天井が高い。
ビュッフェコーナーには朝食らしい料理の数々が並んでいた。
特に変わったものはないけれど、味も品数も、悪くはない。
でもなんかこう、朝らしい気分、
ビュッフェならではのウキウキ気分にならないのはどうして?
即席会場で、レストランにしては少しばかり殺風景なせいだろうか。
でもそれにしたって、もうちょっと楽しい気分になってもよさそうなものなのに‥。
広すぎてがらんとした感じのフロアを横切り、タマゴ料理のコーナーへ。
中華系の男のコックさんが、オムレツを焼いていたので、その前の列に並んだ。
自分の番が来たので、中に入れる具を選び、よく焼いたオムレツを注文した。
コックさんは、ニコリともせず、卵を焼き始めた。
うさぎはその様子を撮ろうと彼にカメラを向けた。
彼は真面目な顔でうつむいたまま、カメラに収まった。
ねえねえ、どうして笑ってくれないの?
普通こういう場面ではニッコリするもんだ。そうでしょ?
「タマゴ焼き係はコックである前にエンターテイナーでなければならない」 とうさぎは思う。 お客のために卵を焼くことより、むしろ笑顔で振舞い、 一日の始まりを楽しくすることの方が大事な仕事だと思うんですけど。
もしかしたら中華系というのは日本人同様、笑うことが苦手なのかもしれない。
実は、おとといのチェックイン時から不思議に思っていたことがある。
それは、あまり中華系のスタッフにお目にかからないこと。
シンガポールという国は住民の7割から8割が中華系のはずなのに、
このホテルではあまり中華系にお目にかからない。
ホテルのフロントにはマレー系、プールサイドにはインド系が多く、
この国の人口比と違いすぎるのを不思議に思っていた。
これも"適所適材"ってことなのかな?
ニコリともしないタマゴ係を眺めながらそう思った。