Singapore  セントーサ島と動物園

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【 ホーカーズ 】

海鮮麺

夕食は、二晩続けてフェリーターミナル近くのホーカーズ(フードコート)でとった。 だいたいこの島には食事をする場所があまりない。 ここも、ゆうべ夜遅くに散々探してようやく探し当てたのだ。

昨夜は夜遅かったせいか、フードコートはほとんど終わってしまった状態だった。 テーブルの並んだ小広い広場を照らす灯りはほとんどなく、 その周りをぐるりと取り囲む20軒ほどの料理屋もほとんど閉まっていた。 たった一軒、中華の店がやっていたので、ありがたくそこで料理にありつくことにした。

お店近くのテーブルに陣取り、チャーハンやイカの炒め物、 ラクサなど5品頼んでしばらくすると、 元気なおばちゃんが大きなカラダをゆすりながら料理を運んできた。
「ハイ! 34.5ドルね!」
「‥? 30.5ドルのはずだけど?」と言うと、おばちゃんは怪訝そうな顔つきになった。 そこで紙に書いて計算を見せると、それをとくと眺めたおばちゃんは突然笑い出し、
「あたしの間違えだ。悪かったね」とカラカラ笑いながら詫びた。

その様子に他意のなさを感じとったうさぎはサイフから32ドル取り出すと、 「おつりは取っておいて」と言った。 もともと数ドルの差にこだわって正したわけではない。 ただ納得して支払いたかっただけだ。 閉店間際に滑り込んだ我らに快く食事を提供してくれただけでもありがたく、 この薄暗いところでは、おばちゃんのその明るさも嬉しかったのだ。

けれど、おばちゃんはおつりをきちんと返してよこした。 計算を間違えた手前、一銭でも余分にはもらえないと思ったのだろう。 ただただ陽気なだけじゃない。きちんとした人だ。

こうしてみると、間違いを指摘したのは正しい選択だった。 黙って支払ってしまったら彼女を疑るところだった。 ほんの数百円をちょろまかしたいのか、と。

◆◆◆

今夜は時間は早かったので、 フードコート周辺は昨夜とは打って変わった賑やかさだった。
入り口の左右にはずらりとみやげ物屋の屋台が並び、 周りの店々の灯りで明るく照らされた広場は、適度な数の人で賑わっている。 昨夜は暗くて気づかなかったけれど、広間の真ん中には瀟洒な噴水まであるではないか!

昨夜たった一軒だった店が今夜は20軒以上。 洋食・中華・タイ料理。それに飲み物屋さんもあり、何を食べようかと迷うほど。
店々を2周してようやく、人のいいおじいさんの店で「海鮮麺」を頼むことに決めた。 見た目が美味しそうだったのに加え、 この店の近くは閉まっている店がいくつかあって閑散としていたので、 同情もちょっとばかり手伝ったのだ。 でも辛いのだけはゴメンなので、「これ、辛い?」と尋ねた。

だけどおじいさんには、英語が通じなかった。 店の奥から出てきたおばあさんにも、やはり通じない。 しょうがないから、メモ帳に漢字で

辛?

と書いてみた。おじいさんとおばあさんは首をかしげた。ならばこんどは、

辣?

と書いてみた。かなり当てずっぽう。でもこれもダメ。 中国語で辛いってどう書くんだろう? シンガポールで英語が通じないなんて、聞いてないよー!

困ったなあと思っていたら、給仕係の若い女の子がやってきて、あっさり通訳してくれた。

辛くないという保証を得た5ドルの海鮮麺を頼むと、 おじいさん、おばあさん、それに息子とおぼしき若いモンの3人が 一斉に調理にとりかかった。 おじいさんがスープをかき混ぜ、おばあさんが麺を湯がく。そして息子が具の準備を整える。 彼らに向けてうさぎがカメラを構えると、 ちょうど麺を持ち上げたおばあさんがそのまま静止し、ニコニコとカメラに収まってくれた。
やっぱりこうでなくっちゃあ!
中華系シンガポーリアンの面目躍如たる笑顔。 一気にこれで同国人の印象が良くなった。

こうして手にいれた海鮮麺はあっさりとした薄塩味で、とてもおいしかった。 長崎ちゃんぽんみたいな太麺に、豆腐やエビ、カニもどき、白身魚などがのっている。
そしてもちろん、全く辛くはなかった。

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