Singapore  セントーサ島と動物園

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【 DFSからの脱出 】

足ツボマッサージ

食事の後はまたバスに乗ってDFS(免税店街)へ。
といっても、DFSはパンパシフィックホテルのすぐお隣り。 バスに乗るより歩いた方がよっぽど早い。
バスの中で、ウェンディさんが 「買い物をしない方は、フットマッサージにご案内しますよ」と言っていたので、 うさぎはそれにのることにした。

ところが。バスを降りると、ウェンディさんはうさぎをDFSの入り口に押し込んだ。
「でもわたしはフットマッサージに‥」と言いかけると、耳うちするウェンディさん。
「とにかく一度入って、出口から出てきて。ここで待っているから」と。

はああ? なんでわざわざそんなことを〜?

「そうじゃないと、DFSの人、怒るからね」

ええ〜、なんで〜??

ウェンディさんに説明を求めたかったが、 ウェンディさんはただ黙って階上へと登っていくエスカレータを指差す。
仕方なくエスカレータに乗り、二階へと連行されながら、 「ウェンディさぁぁん!」と呼びかけるうさぎ。捨てられた子犬のような気分だ。

さて、上階でエスカレータは降りた。 でも「出口から出てきて」とは言われたものの、一体どこに出口があるのか分からない。 ‥っていうかこのDFS、お客が勝手に出て行かないように、 わざと出口が分かりづらく作ってあるのではないだろうか。 非常口はあるのだけれど、そこにはがっしりしたドアにかんぬきがかかっている。 まるで袋のネズミ。出られない。

やっとのことで、隣りのビルに通じる通路を見つけ出し、隣りのビルを通って外に出た。
「出られたー!」と思ってホっとした瞬間、 どうしてわざわざDFSに入らなければならなかったのかが急に飲み込めてきた。
これもまた"頭数"だ。 DFSとの契約で、ガイドのウェンディさんとしては、 お客の頭数を揃えてDFSに送り込まなくてはならないのだろう。 それによってリベートを稼ぐのだ。

う〜ん、まるで人身売買。一人アタマいくらでDFSに売られてしまったワタシ‥。

しかも、一度DFSに売ったそのうさぎを裏で密かに回収して、 フットマッサージに斡旋しようっていうんだからスゴイ。 きっとこれはこれでまたリベートがつくんだろう。 一人の人間、単一の時間でリベートを二重に稼ぐとは。おみそれしました〜っ。

ようやくウェンディさんのもとに戻ってきたうさぎが声を掛けると、 ウェンディさんは同僚の男性ガイドをうさぎに紹介した。 彼が店まで連れて行ってくれるのだという。

そんなわけで彼と一緒に隣りのパンパシフィックホテルに赴いた。
そのエントランスに到着すると、そこには別の男性が待ちうけていて、 ホテルの中へはその人と入っていくことになった。

目指す店「オリエンタルフットリフレクソロジー」はホテルの1階にあり、 その店には受付の男性がいて、 3人目の案内役は彼にうさぎを預けてどこかへ消えた。

4人目の彼は店の奥にうさぎを招き入れ、洗い場で足を洗うように言うと受付に戻った。
足を揉んでくれたのはまた別の人で、大柄なおばさんだった。 うさぎは足を洗うと、長いすに横たわり、足を揉んでもらう体勢を整えた。

DFSの入り口からおよそ2分。 このたった2分の間に、うさぎの身柄は5人の人間の手から手に渡った。 うさぎを案内してくれた人たちはみな少しづつそのお駄賃を分け合うのだろう。 皆で収益を分け合うその姿は美しいといえば美しい‥のか?

◆◆◆

フットマッサージの部屋は、照明を落として薄暗くしてあり、音楽がゆったりと流れていた。 部屋の中は暖かく、眠くなってしまいそう。 でも、フットマッサージというのがどんなものなのか、興味があった。 できればその極意を覚えて帰りたい。
――というわけで、しっかと目を見開いて、 おばさんが揉むのをよく観察したはずなのだけれど、 店を出たときにはアタマの中はほぼカラッポになっていた。

「店やスタッフによって、すごく痛い場合もあれば、すごく気持ちがいい場合もある」 と聞いていたけれど、うさぎの場合はその中間ぐらいの感じだった。 ちょっと痛いこともあるけれど、だいたいは気持ちが良かった。

足の裏は体中の器官・内臓のツボが集まっているところ。 足を上手く揉めば、病ですら治ることがあると聞く。
「自分の体が悪いところをピタリと当てられてびっくりした」 なんていう逸話をどこかで読んでいたので、うさぎもおばさんに尋ねてみた。
「わたしの体に、どこか悪いところはありますか」って。
でもおばさんは、手を休めずに、ただ首をよこに振っただけだった。
う〜ん、残念。うさぎの胃弱を当てられたら、褒めてつかわそうと思ったのに。

こうして、特にどうということもなく、フットマッサージは40分ほどで終了した。 行きは丁重なエスコート付きだったけれど、帰りは一人でDFSに戻った。

集合場所にはまだ誰も来ていなかったので、もう一度DFSに入り、きりんたちを探した。 でも見つからなかったので外に出ようと思ったのだけれど、 これがまた出られなくなってしまった。 エスカレータを登って入ったのだから、 下ればいいはずと思って下りのエスカレータに乗ったのだが、 ついたところは1階ではなくどうやら地下。 ジャングルのような装飾を施した売り場を二度三度とぐるぐる回ったら、 富士の樹海に迷い込んだような気がした。

結局その階からは出ること適わず、結局さっきと同じ、 となりのビルへの連絡口を見つけてそこから出た。 まさに"脱出"という言葉が相応しい。おそるべし、DFS!

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