チャアは動物が大好き! 特に、ネコやネズミといった小動物を見ると、 「カワイイ〜!」と身をよじらせずにはいられない。 そんなチャアに動物を見せてやりたくて、最終日の今日は動物園で過ごすことにした。
シンガポール動物園はナイトサファリの隣りにあり、 『地球の歩き方』によれば 「1973年開園以来、世界でも類をみないオープンシステムの動物園として人気」 なのだそうである。 なるべく動物を檻に入れず、 自然の地形を利用して人間と動物とを仕切ることをモットーにしているらしい。
実際に行ってみてまず思ったのが、この動物園はきれいだということ。動物臭さが全くない。
広いから臭いが篭もらないのだろうかと思ったけれど、臭いの根源自体も見当たらない。
動物園に行くのが億劫なのは、檻の中にころがっている排泄物とその臭いのせいだ。
髪にまとわりつきそうなその臭いにはいつもゾッとしてしまう。
でもここにはそれがない。
なんだ、動物園もやろうと思えばこんなにきれいに保てるじゃないか。
日本人はきれい好きのはずだけれど、動物園はまだまだ努力が足りない。
その点、シンガポーリアンはエライ!
オープンシステムがどうの‥という以前に、その行き届いた管理に感心した。
これならゆっくり動物を見ようという気にもなる。
チャアの希望もあって、動物の写真をこまめに撮ることにした。 動物にファインダーをあわせる度に、なんだかいい写真が撮れそうな予感がした。 なぜって、バックがいいからだ。まるで野生の動物を撮っているみたい。 コンクリートやら鉄格子やらといった人工物がないから、いい雰囲気の写真が撮れる。
それに面白かったのが、ナイトサファリの舞台裏を見ているようだったこと。 ナイトサファリは暗かったので、 檻や柵なしにどうやって動物が逃げられないようにしているのかが よく分からなかったけれど、ここでその工夫をとくと拝見した。 分かってしまえば、その仕組みは簡単なものばかりだった。 たいていは溝を深く掘ってあるだけ。川の流れを利用しているものもある。 優れた跳躍力を秘め、しかも獰猛なヒョウやチーターだけは どうにも手に負えなかったとみえて、頑丈なガラスの向こうにいた。
動物のショーも何度かあり、アシカのショーとヘビのショーを見た。
アシカのショーは楽しかった。
寝ているアシカのお腹をスタッフが叩くと、
アシカが手(ヒレ?)でペッ、と自分のお腹を隠す。
その様子が可愛くて、チャアが大喜びした。
ショーが終わったあと、ホッペにアシカのチュウが受けられるというので、
子どもたちをたきつけたけれど、尻込みしているので、うさぎが自分で名乗り出た。
アシカの側に寄ると、チュバッ!という派手な音と共に、冷たいような妙な感触がして、
頬が魚臭くなった。
しばらくすると、自分ではそのにおいを感じなくなったけれど、
夜になっても子どもたちは「臭い」と言っていた。
ヘビのショーの後にも"ヘビ巻き"ができたけれど、好奇心に満ち溢れたさすがのうさぎも、
これだけはとてもやる気になれない。
広い会場の後ろの方の席に座り、遠くからその様子を伺うのがせいぜいであった。
動物園は広かった。
チャアが大喜びで一つ一つの動物をじっくり見ていたら、
いつの間にか夕方になってしまった。そろそろ閉園の時刻である。
まだ全部見てはいないのに――。
最後の方は駆け足になり、閉園時刻ギリギリにゲートまで戻った。
でも、あとから地図を見てみたら、まだまだ行っていないところ、見ていない動物が
いくつかあったのだった。