初日からあまり疲れさせてはと思ったのでプール遊びは一時間ほどで切り上げ、 夕方、シェラトンの庭を皆で散歩しに行った。
アラマンダも広いが、シェラトンはこれまた広大であった。
当世随一のこの超高級ホテルは、うさぎの中にある「高級ホテル」のイメージを見事に裏切ってくれた。
高級ホテルというのは、何となくワイキキにあるような都会的なものだと思っていたのだが、
ここはもっとずっとリラックスした雰囲気だ。
屋外と屋内が入り交じり、広大な庭園のなかを長いプールがうねうねと流れる、何とも不思議な空間。
そこには想像していたような威圧感や取り澄ました感じがない。
だが、このハンパではない広さ、美しさ‥! これこそが本物の贅沢なのだろう。
ロビーを抜けると、いつの間にやらそこはレストランになっていて、タイの工芸品の屋台が並び、
広い廊下だと思っていると、そこをいきなり小さな車が人を乗せて走ってくる (屋内なんですけど‥) 。
ショッピングアーケードらしき一角もあるし、向こうにはビリヤードコーナーもある。
そのどこもかしこもが、何とも新鮮なエキゾチックさを醸しだしている。
タイ文化のエッセンスを、うんとおいしい形で採り入れ、いたる所に散りばめた、不思議な不思議なワンダーランドだ。
しかも、この静けさはどうだ。どうしてこんなに人影が少ないのだろう? 何百とある部屋の宿泊客は一体どこで何をしているのだろう。 この人の気配の少なさは、まるで真夜中によそ様の大邸宅に迷い込んでしまったみたいだ。
シェラトンの長〜いプールを擁する庭は、ネネとチャアのお気にも召したようで、 二人ともプールを追って大はしゃぎ! 青々とした芝生に水をたたえた大きな青磁の鉢が並ぶ、 誰もいない見事な中庭を自由に走り回るわが子を見ていると、マハラジャにでもなった気分だ。
これはきっと夢にちがいない。
だって、そうでなかったら、あまりにも幸せすぎるもの‥。