シェラトンの庭を散歩したあと、夕食の買出しに行った。
昨日はどこに何があるのか、さっぱり分からなかったが、部屋に置いてあったガイド冊子などを見て、
今ではだいぶラグナエリアについて分かっている。カナルビレジというショッピングエリアがあることも。
ここは50軒くらいの店が立ち並ぶ小綺麗なショッピングエリアで、 ジム・トンプソンなどタイシルクのテイラーもあれば、宝石店、各種みやげ物屋、コンビニ、 そして不動産屋まであった。 だが、50軒の店舗のうち、まだ三分の一は空いたまま。 ご多分に漏れず、ここも人口密度が低く、閑散としているのだった。
うさぎたちは、まずコンビニでパンやジャムなどを買った。 ジャムは外国製のとタイ製のが並んで売られており、外国製のはタイ製のの何倍もの価格だった。 うさぎはタイ製のイチゴジャムとマーマレードをそれぞれ25バーツで買った。
この街でおみやげも捜した。
色とりどりのシルク地が並ぶテイラー、ルビーや真珠を並べた宝石店、店中が貝細工の店、
Tシャツ・子供服専門店、アンティークショップ‥。
居並ぶ店はどこも専門店のたたずまいで、ただの「おみやげ屋」は少なく、そこがこの街を安っぽさから救っていた。
それに、商品の価格は安くはないが、ちゃんと値札がついているのが嬉しい。
タイシルクのドレスに憧れたうさぎは、テイラーの前をうろうろしたが、
その高級そうなたたずまいに怖気ずいて、結局店内に足を踏み入れることができなかった。
そこで、小物を扱う店でタイシルク張りの写真立てを代わりに買った。
とある店に、妙にずしりと重い、実物大の布製ヤモリが売っていた。
カラフルな柄物の生地で出来ているから本物と見紛うはずはないのだが、手に乗せたら、
その感触と重さが何ともリアルで、ギクッとして取り落としてしまった。
実は昨夜から、ヤモリには馴染んでいる。アラマンダの廊下の壁にはヤモリがいっぱいたかっているのだ。
ときどきクオ〜ッという正体不明の鳴き声も聞こえてくるが、
たぶんその声の主もヤモリなんじゃあないかとうさぎは推察している。
さすがに高級ホテルのシェラトンの壁がヤモリだらけだったりはしないが、
レストランの料理の置かれたすぐ脇の柱に一匹張り付いているくらいのことはあった。
そういう環境のここでは、ヤモリのぬいぐるみ(?)って案外気の利いたおみやげ品かもしれない。
カナルビレッジも人口密度が低く、こんなんでやってかれるのかな、と思うような閑散ぶりであったが、 まったく売れないわけでもないらしく、ちょっと迷って買わなかったバッグが、次に行ったらなかった。
不動産屋に入ると、アラマンダの部屋がドル建てで売っていた。 価格は1000万円程度。ちょうど売りに出ていた部屋はラグーン沿いではなく、道を挟んで逆側の、 バンヤンツリー・ゴルフコース沿いの部屋だった。 うさぎは、今自分が泊っている部屋が売りに出ていなくてよかったと思った。 だって、もし売っていたら、何としてでも手に入れたくなったに違いないから。