2003年9月17日 ピロリ菌を追え!!(最終回)

8月13日のつづき

今日も、病院を訪れると、まず血液検査から始まりました。
血液検査室に検査票を提出すると、
「うさぎさーん、中へお入りくださーい!」とうさぎに呼びかけたのは、 まだ若い看護婦さん。
思わずウッと小さくうめくうさぎ。 できればこの間の看護婦さんに採血していただきたかった‥。

と、そう思いつつ検査室に入ると、お若い看護婦さんは奥に引っ込み、 入れ替わりにこの間の年配の看護婦さんが現われました。 ネームプレートをみると、お名前を田中さんとおっしゃる。 ‥ああよかった。田中さんの注射はそんなに痛くないの。

それでも、「なにぶん痛がりなので、どうぞよろしくお願いします」と、 いつものセリフを口にしないと気がすまないうさぎ。 ここのところ毎月採血しているけれど、それでも怖いの。全然慣れない。
田中さんは、
「ええ、わかっていますよ。 何度やっても注射なんて嫌よねえ。 実際にはそんなに痛くないんだけれど、怖いのよね、分かるわ〜」と言いつつテキパキと 手を動かし、アッという間に採血を終えました。

さて、採血を終えてほんの数分後には、ドクターハンサムの診察です。
診察室に入って「よろしくお願いします」とうさぎが頭を下げると‥。
あれっ? 「はい、こちらこそ」と、ドクターも頭を下げました。

「さて、うさぎさん、増血剤は飲んでいますか?」とドクター。
「はいっ! ちゃんと飲んでいます!」と元気よく答えるうさぎ。 本当は、けっこう飲み忘れたりもしたのだけれど、それはこの際、黙っておこう。

ドクターの机の上には、一週間前に行った尿素呼気試験の検査結果票が置いてありました。 でも素人のうさぎには、これを一見したくらいでは、どういう結果なのか全然分からない。 それでちょっとドキドキしておりますと、ドクターがおっしゃいました。
「ピロリ菌につきましては、どうやら除菌に成功したようですね」と。

ピロリ菌除菌成功?!
やった〜っ!

「そうですか! ありがとうございます!」とうさぎは熱心にお礼を言いました。 胃の調子がいいからたぶん大丈夫だとは思っていたけれど、 でもやっぱり心のどこかで不安だったのです。 だから良い結果を聞けて、本当に嬉しい。肩の荷が下りたような気がしました。

ああもう、ウキウキが止まらない〜!
もう貧血なんてどうだっていいわ〜♪

けれど、ドクターのお考えはまた違ったみたい。 先生は早くも増血剤の処方箋を前に置き、ペンを握ってこうおっしゃいました。
「ところで増血剤ですが、まだ残っていますか?」
「はい! 残っています!」うさぎはまた元気に答えました。

するとドクターハンサムは突然笑い出しました。

えっ? えっ? なんでそこで笑うの?
うさぎ、なんか変なこと言った?

けれど、「どのくらい残っているのでしょう?」と尋ねられ、ハタと気付くうさぎ。

しまった! 薬がまだ残っているということは、
飲み忘れたことを認めるようなものだわ!

って。
「え‥えーと‥」しどろもどろになるうさぎ。 さっき「ちゃんと飲みました!」なんて元気よく答えた手前、 バツが悪いったらありゃしない。そこに、
「どのくらい残っているのでしょうか?」とドクターハンサムは畳み掛けてくる。
「え‥えーと、‥五日分くらい‥?」と、恐る恐る言ってみるうさぎ。 ホントはもっと残ってるんだけど。 だって、しょうがないじゃない? バリ旅行に行くとき忘れていっちゃったんですもん。

ドクターはタメイキを一つつくと、おっしゃいました。
「あのねえ、うさぎさん、実は貧血、全然良くなっていないんですよ」と。 気付けば、先生の目は、前回の採血票と今回の採血票に注がれている。
‥ああ、検査結果からすでにバレてたのね‥。
「あ、でも、ほ‥ほらっ、血色素量が9.7から10.5に上がっていますよっ!」と、 一応強調してみるも、功を奏さず。 せせら笑うように、ドクターにこういわれてしまいました。

「その程度は"誤差"です」

と。「普通はもっと劇的に数値が上がります」
「は‥そうですか、誤差ですか、‥スミマセン」と謝るうさぎ。 「でも、えーと、多分それはきっと月経などの関係で効果が出ないということも‥?」
「もちろんそういうこともあるでしょうね」とそっけなくおっしゃるドクター。

わーん、ドクター、怒ってるかなあ?
それとも呆れられてる?
あーあ、こんなことなら、もっと真面目に薬を飲むんだった‥。

「それでは次回も"一応"診察の前に血液検査を受けていただくことにします」とドクター。
"一応"という言葉にトゲがあるような気がするのは、うさぎの気のせい?
「わかりました。して、次回はいつごろお伺いすれば‥?」と尋ねると、 ドクターは突き放すようにおっしゃいました。

「"薬がなくなったら"でいいです!」

と。
‥やっぱりドクター、言葉にトゲがある。

うわーん、突き放されると、なんだか寂しい〜っ!

そんなわけで、
「わかりました。頑張ります! 頑張って飲みます!」とうさぎは熱心に言い、 本当に頑張って増血剤を飲もうと決意したのであります。(「ピロリ菌を追え!!」完)

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読者のみなさま、長いことお付き合いいただきまして、ありがとうございました。 めでたく大団円を迎えた「ピロリ菌を追え!!」は、 今回を持ちまして終了させていただきます。
次回からは引き続き、秋の新連載、うさぎの貧血闘病記「ゾンビからの脱却」をお楽しみに!

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付録:
「ピロリ菌を除菌した記念に下さい!」 と頼み込んでいただいてきた検査票のコピーです。
20年以上も患ってきた十二指腸潰瘍から解放されたんですもの、 この程度の記念品くらい欲しいじゃない?
でも、看護婦さんにはご理解いただけなかったみたい。
「なんでこの人はこんなものを欲しがるんだろう?」 といった表情で笑われてしまいました。

尿素呼気試験判定票

"プロミレ"というのは、‰(千分率)、つまり0.1パーセントのこと。 どうやら2.5‰以下が正常値のこの試験で、 うさぎの数値は2.3‰だったので、陰性(−) = 正常ということのようです。

「ゾンビからの脱却」につづく